玄海原発:冷却水漏れ1.8トン 九電公表せず - 毎日jp(毎日新聞)

玄海原発:冷却水漏れ1.8トン 九電公表せず
1次冷却水漏れのトラブルを起こした玄海原発3号機=佐賀県玄海町で2011年12月10日、本社ヘリから加古信志撮影
1次冷却水漏れのトラブルを起こした玄海原発3号機=佐賀県玄海町で2011年12月10日、本社ヘリから加古信志撮影

 九州電力は9日深夜、定期検査中の玄海原子力発電所佐賀県玄海町)3号機で、1次冷却水の浄化やホウ素濃度調整をするポンプから1次冷却水1.8トンが漏れたことを明らかにした。九電は当初ポンプの温度上昇のみを同日午後3時半以降に佐賀、長崎両県や報道各社に伝えたが、1次冷却水漏れは公表しなかった。

 九電によると、9日午前10時48分、3号機の充てんポンプ3台のうち稼働中だった1台で、通常は30〜40度の温度が80度以上に上昇して警報が鳴った。このため、休止していた他のポンプに切り替えた。1次冷却水はコバルトなどの放射性物質を含んだ汚染水で、原子炉補助建屋内のピットと呼ばれる回収ますに出たが、回収。外部への影響はないという。

 3号機は昨年12月11日に定期検査入り。原子炉内には燃料が装着されており、冷温停止状態を保つために冷却水を循環させていた。九電は高温になった原因は、冷却水不足や1次冷却水の不良などの可能性があるとみて調べている。

 九電は、温度上昇の警報が鳴った約4時間半後の9日午後3時半以降に佐賀、長崎両県、同6時ごろに報道各社にポンプの異常のみを知らせた。汚染水漏れについては、報道機関の問い合わせに、事実関係を認めていた。九電によると、汚染水漏れが設備内にとどまっているケースでは法規上、公表する必要はないという。九電は「1次冷却水の漏れは原子炉補助建屋内にとどまっており、広報する必要はないと判断した」と説明した。

 経済産業省原子力安全・保安院も、今回のポンプの異常や冷却水漏れは、法令による報告義務の対象にあたらないとしている。ただし、九電からは、警報が鳴ってすぐにポンプを停止し、冷却水が外部に漏れていないことや、モニタリングデータに問題がないとの報告があり、原因を調査することを確認したという。【中山裕司、竹花周】
 ◇玄海町への連絡は10日朝

 玄海原発3号機の1次冷却水漏れトラブルについて、九電から地元の玄海町に事実関係の連絡があったのは10日朝になってから。周辺自治体には報告がなく、九電はどこから漏水したのかも明らかにしていない。安全性に問題があるのか分からず、情報を公開しない九電に自治体や住民は不信感を募らせている。

 九電は9日午前10時50分ごろに発生した3号機のポンプの異常について、同日午後3時半以降に佐賀、長崎両県などの関係自治体に伝えた。しかし、1次冷却水が漏れていたことは報告していなかった。

 玄海町の岸本英雄町長は10日、取材に対し、1次冷却水漏れの連絡が九電からあったのは同日朝だったことを明らかにし、「情報提供は遅れずにきちんとしてほしい」と苦言を呈した。また「冷却水は建物の外部には漏れていないようなので、心配は薄い」と話した上で、「故障で水が漏れることは考えられるが、1.8トンは量が多すぎる」と懸念も示した。

 市民団体「プルサーマル佐賀県の100年を考える会」の野中宏樹共同世話人は「福島原発事故以降、住民は放射能の問題に敏感になっているのに、情報を公開しないのは九電の企業体質が変わっていないことを示している」と憤る。

 県についても「県民の命と安全を守るために、ささいな情報でも把握しておくべきだ。九電を監視するという機能を果たしていない」と批判したが、古川康知事は取材に「コメントはない」と述べるにとどまった。

 一方、玄海原発から30キロ圏の福岡県糸島市や最短8キロにある長崎県松浦市には冷却水漏れは報告されていない。糸島市の松本嶺男市長は「最初はポンプの異常で大したことないとの報告を受けたが、汚染水が漏れるなど想定していなかった。事実の一部しか公表しないのはいかがなものか」と批判。松浦市住民団体玄海原発と日本のエネルギー政策を考える会」の宮本正則会長も「またか、と言った感じ。これが外部への放射性物質漏れ事故だと思うとぞっとする」と怒りをあらわにした。

 玄海原発で問題があった場合、九電は立地自治体である佐賀県玄海町と安全協定を結んでおり、協定で定められたトラブルについては連絡することになっている。だが協定を締結していない自治体への連絡義務はなく、福島原発事故放射能被害が広範囲に及んだことを受け、同原発から30キロ圏内の自治体から協定締結や速やかな連絡を求める声が相次いでいる。【原田哲郎、竹田定倫、野呂賢治】

毎日新聞 2011年12月10日 11時32分(最終更新 12月10日 14時04分)

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