ピソ裁判の判決

ローマ人の物語〈17〉悪名高き皇帝たち(1)
ローマ人の物語〈17〉悪名高き皇帝たち(1)
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 460
  • 発売日: 2005/08
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  • おすすめ度 5.0

塩野七生は次のように書く。

判決の日の朝、ピソは、のどをかき切った姿で発見された。しかし判決は、被告の生死にかかわりなく下されたのである。
一、…
二、…
三、…
四、…
皇帝には、控訴を受けてそれに裁決を下す権利がある。被告はすでに死んでいるので控訴はなかったが、ティベリウスは自分のもつ権利を行使した。つまり、「最高裁判決」を下したのである。
*1

まず、年代記3巻17節によると一から四までの「判決」は判決ではなく、執政官の意見である。年代記1巻74節日本語訳註には元老院法廷では判決に先立って指導的な議員の意見を尋ねる、とある。年代記3巻17節から分かることは、ピソ裁判は元老院裁判で、主催者(つまり裁判長)は元首のティベリウス、評決の前に最初に意見を述べたのが執政官だということである。この時ティベリウスは判決を覆したのではなく、決議前に判決に干渉したのだろう。

*1:p.165