『ローマ史』55-11

ティベリウス*1は非常に星による占いに精通していたらしい。そして占星術の達人であるトラシュッルス*2を伴っていたので、ティベリウス自身とガイウス*3とルキウス*4の双方に待ち受けている運命は何か十分正確な知識を持っていた。かつてロドス島*5ティベリウスはトラシュッルスが自分の本心を知っている唯一の人間だったので、壁から突き落とそうとした、と言う話がある。しかしその企図は実行されなかった。その時ティベリウスはトラシュッルスの憂鬱な表情に気づいたが、それは実際に憂鬱だったのではなく、なぜ顔色が悪いのか尋ねられた時答えたように、ある危機がトラシュッルスを待ち受けているという予言を得たためだった。ただの計画にすぎない陰謀を予知したこの答えはティベリウスを驚嘆させた。そこでティベリウスは心に抱く希望のためにトラシュッルスを手元に置くことを望んだ。トラシュッルスはあらゆる問題にとてもはっきりした知識を持った。遠くからティベリウスに母*6アウグストゥス*7からローマに帰還を促す伝言を運ぶ船が近づいた時、トラシュッルスはもたらされる情報を前もって伝えた。